山口県在住 48万円で戸建てを落札して初めて大家さんになった加納さん
加納さん(仮名)は山口県の防府市役所に勤務する31歳の公務員です。
実家から通っているので住居費はかかりません。ただ、漠然とした不安を持っていました。
(このまま、働いて歳を取ってゆくのか)
高校を卒業して13年目、仕事にも慣れ、刺激の少ない毎日でした。
ある日、4歳下の彼女が「ねぇ、私たち結婚するの?」と迫るでもなく、つぶやきました。
加納さんは「さぁ、ね」と受け流すだけ。
彼女は「そっか…」と一言残しデートの最中に帰ってしまいました。
加納さんはどこかで分かっていました。
淡々とした毎日に飽きている自分自身に不満を覚えていたのです。
それを彼女も感じ取っていたのではないかと、ため息をつくしかありませんでした。
それから半年後、二人は白いチャペルの前で記念写真に納まっていました。
加納さんを一変させたのはネットで見つけた981.jpです。
防府駅から北西方向に1500m離れた場所にある築40年を過ぎた戸建(土地30坪、平屋3DK)の画像に釘付けになりました。
(これって、あそこか?)
子供の頃、よく遊んだ公園の向かいにある一軒家です。
野球をしていて、あの家の窓ガラスを割ってさんざん怒られたことを思い出しました。
売却基準価額は60万円。
でも待ってください。
物件は期間入札ではなく特別売却です。
特別売却の場合は売却基準価額の80%で購入できます。それも早い者勝ちです。
何かを変えたいと思っていました。
今日、この物件に出会ったのは運命のような気がしたのです。
翌日、加納さんは12万円の保証金と三文判、そして住民票を握り締めて裁判所にバイクで乗りつけました。
どうしようもない物件だったら保証金を流せばいいと覚悟を決めていました。
幸運にも他に入札者は訪れず、48万円で落札。
その後、加納さんは荒れ果てた家を、勤務の終わった後と休日を返上して修復しました。
そして、ある日のこと、疎遠になっていた彼女がお弁当を持って現れたのです。
「がんばってんじゃん」
リフォーム後、家賃3万円で入居者希望者が現れました。
48万円で落札した競売物件は加納さんと彼女の赤い糸を結び直してくれたのかもしれません。
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